エピローグ(あとがきに代えて)
2010年12月、師走の慌ただしいなか、私がこの原稿をヘロヘロになりながら書いていると、友人からメールが届きました。
その友人には、私の娘と同じくらいのお子さんがいて、ある朝、その子が「お腹が痛い」というので病院に連れて行ってみると、小児がんと診断されたというのです。
しかも、ステージはⅣですでに肺までかなり転移していたそうです。
そのときの衝撃といったら…。
その子の元気な姿を、この前見たばかりなのに。
何度も、何度もメールを読み返しました。
私自身もがん患者であり、この本を執筆するにあたって、がんに関する資料や書籍を読んだり、セミナーを聞き、ある程度、知識をもっていたにもかかわらず、本当にショックでした。
あるいは、がん患者であるが故に、告知を受けたときの驚きや家族の反応、その後の慌ただしい状況などが想像できたからこそ、その友人の今の気持ちを察すると、たまらなくなったのかもしれません。
そして、ちょうど1年前。私が、家族や友人、知人に、がんと診断されたことをカミングアウトしたときも、彼らは、こんな気持ちで、あんなにも泣いてくれたのかと、いまさらながら思い至りました。そして、彼らの想いをそこまで斟酌していなかった自分がとても恥ずかしくなりました。
がんは、本当に恐ろしい病気です。
何の痛みや自覚症状もないまま、ある日、突然、がん患者にさせられ、周囲の家族や状況も一変してしまいます。
あるがん患者さんは、そのときのことを、「がんと診断されたとたん、まるで、さーっと潮を引いたように、自分と周囲が分断させられてしまったみたい」と言っていました。
「ナニワ金融道」で知られる漫画家の青木雄二さんが亡くなったのは、2003 年9月。
肺がんでした。その最後の著書『青木雄二のゼニと病気』(青春出版社)で、青木さんはこう書いています。
「ガンというのは、体内に花が咲くことをいうんやて。誰でも体のなかにガンのつぼみみたいなモノを持っとって、ストレスが溜まったときにポンと咲くらしい。ストレスは、ガンという花を咲かせるための栄養みたいなもんということやね。わしの場合も、普通ならつぼみのままでおとなしくしとったはずやのに、不本意にも咲かせてしまった。ストレスを持っとるということや。いまは、そのストレスの正体が何であるかを分析して突き止めなならんと思うとるわけや。」
誰しも、がんの花を咲かせてしまう可能性を持っています。
そうならないよう、普段から予防できることはする。
万が一、そうなったときの備えをしておく。
定期的に検査をして、まだ小さいうちに治してしまう。
最悪な状態でも、自分のために、家族のために、ベストを尽くす。
あなたが、今、できる範囲のことを、最大限の努力でやっておくことをお勧めします。
最後になりましたが、がん研有明病院の岩瀬拓士先生、ならびにCFP®・税理士の山崎信義氏には、適切なご指導とご指摘をいただきました。また、本書の発刊・編集にあたり、株式会社ビーケイシーの玉木伸枝さんに適切な助言と、ひとかたならぬお世話になりましたことを、お礼申し上げます。
2011年7月
黒田 尚子
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